excitemusic

exicteブログでexicte中
by e000e00020
ICELANDia
カテゴリ
全体
未分類
以前の記事
お気に入りブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


<   2007年 03月 ( 2 )   > この月の画像一覧

住居だった。

「これ、マグサだ。牛は好きだ」
「どこ行く? ウン海か」
 そんなことを言って、例の微笑をやる。島の女の人の風習らしいが、正代も風呂敷(ふろしき)や何かの布れでいつもすっぽりと頭を包む。まるでロシアの農婦の被(かぶ)るプラトオクのようだ。
 その格好でどんな土砂降りの雨の中でも平気だ。時には頭から肩からぐしょ濡れになって、日照りの下を歩くと同じに仕事している。奥さんに訊くと、雨どころか、冬でも蒲団(ふとん)なんかきて寝ることはないという。いつも縁側にごろ寝する。彼女は白痴でこそなかったが、母親は白痴で、彼女はその私生児なのだった。正代は自分の出生を知って、その母親をとても嫌やがるという。白痴の母親はもとここの家にいたことがあるので、今も時々やってくる。その母親というのは僕のいる間にも一度やってきたが、正代の母親と思えないくらいに若くて、やはり私生児の赤ん坊を背中にくくりつけていた。家は阿古村の部落にあるのだが、ちっともそこへ帰えらない、どこにでも地面や石垣の隅なんかで寝るんだという。その母親の来たとき、正代はぷいとどっかへ姿をかくしてしまった。
 家の前の畑傍に四坪ばかりの小屋がある。トタン葺(ぶ)きで、板壁というよりほんの板囲(いたがこ)いだ。窓らしいものがなくて、たぶん雨戸の古だろうと思われるようなものが押上窓のように上部にとりつけてあるきりだ。内部は半分は土間で、つくりつけの竈(かまど)が二つ並んでおり、その隅にやはり竈の上にのっけて固めた工合の風呂釜がある。むろん煙出しなんかないので、しょっちゅう煙がこもっているし、どこも真黒に煤けている。後半分は畳敷と板の上に上敷(うわじき)をしいてどうにか部屋らしい体裁になっているが、そこが牧夫の民さんと白痴の昌さんとの住居だった。
 僕は頭の悪いのは昌さんだけかと思っていたら、民さんの方もやはりそうだった。民さんは四十いくつだという、小柄で、顔も同じように小さいが、それなりに輪郭(りんかく)のととのった顔だった。毎朝牛をつれて山へ行き、夕方薪(まき)を背負って牛といっしょに帰えってくる。昌さんは三十を越しているというが、二十三四にしか見えない。そしてひょろ長い。眼はひどい斜視だが、いつも上瞼が垂れているのでどこを見ているのかわからない上に、まるで人を軽蔑している風に見えるのだった。僕がはじめて彼を見て驚いたのは、そのいかにも憂鬱な表情だった。誰かが彼の前へ現われると、彼はさっさと逃げて行くが、そうでないときはじっとどこか一点を(といっても視線はわからないが)見て、額いっぱいに皺を浮かべる。まるで思いあぐんでじっとその場に立ちすくんだという様子だ。そういうときは声をかけてもだめだ。答えないし、答えても「ええそうです」「そうです」との一点張りだ。それもいやいやでいかにも煩(うる)さそうだ。
 もっともこの「そうです」は彼の口癖で、彼が何かといえば唄う歌、「恋し、恋しい銀座の柳」の後でも「そうです。ええ、そうです」とつけ加えるのだったが、なぜ彼はこんなに陰気な顔をしているのだろう。彼には普通人のようにものを感じる能力があるのだろうか。もしないのだったらどうしてこんな表情をするのだろう。灰色ばっかりを見ているような眼。彼の重たい沈んだ顔に何か動くものがあるのは、喰物を見たときだけだ。彼は何でも喰べ物でさえあれば一瞥(いちべつ)しただけで、ひょいとびっくりしたように立ち上がる。何か直線的なものがそのとりとめのない表情に現われてくる。そわそわと行ったり
[PR]
by e000e00020 | 2007-03-11 17:10

動画サイト

Dailymotionなるあらたなサイトがあるそうである。
より容量の大きい動画を投稿することが可能のようである。
[PR]
by e000e00020 | 2007-03-03 20:54